The Bookend

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

岩波ブックレット『沖縄の基地の間違ったうわさ』『辺野古に基地はつくれない』書評|海を受け取ってしまったあとに(5・6)

辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票から、2年が経った。私は、『海をあげる』に「優しいひと」として登場する元山仁士郎氏が代表を務めたイベント「2.24音楽祭」を断片的に視聴しながら、当時、ハンスト報道の周辺に吹き上がっていた猛烈な賛否の声を前に…

高良勉『沖縄生活誌』書評|海を受け取ってしまったあとに(4)

沖縄愛にあふれ過ぎた「べき論」としての語りだったとしたら、重いなあ、と身構えていたのだが、心配ご無用。文体のマイルドさも相まって、読みやすい一冊だった。 戦後、1949年に、沖縄南部の百名・新原海岸のムラで生まれ育った著者は、自分が見て、触れて…

池宮城秀意『戦争と沖縄』書評|海を受け取ってしまったあとに(3)

私の通っていた高校には、沖縄への修学旅行がなかった。過去にはやっていたらしいが、ある時廃止にしたということだった。進学に向けて、沖縄で平和教育「なんか」している場合ではないと、教員たちは考えたのかもしれない。 たしかに、もし沖縄行きがあった…

照屋林賢・名嘉睦稔・村上有慶『沖縄のいまガイドブック』書評|海を受け取ってしまったあとに(2)

ふと、沖縄に対する自分の関心というのは、素直じゃないんだろうなあ、と思うことがある。お前、ついこの間まで、『るるぶ』的な世界にいたじゃないかと。 だからこそ、コアの部分を早く理解しなければと思う一方で、なんだか裏口入学しているような、妙な居…

新崎盛暉『日本にとって沖縄とは何か』書評|海を受け取ってしまったあとに(1)

タイトルのとおり、ここには大きな問いかけがある。私は、正直に言って、本書を読み終えた今でもなお、この問いにハッキリと答えられる自信はない。知識というより、資格という点で。厳しい本だが、受け取れるものは多い。 著者はここで、戦後の70年、1945年…

【特集】シリーズ:『沖縄の本』――海を受け取ってしまったあとに

ある朝、朝刊の見出しに「辺野古 土砂投入2年」とあった。添えられた青い写真に思わず見入る。それは確かに、私の海だった。『海をあげる』と、上間陽子さんから渡された私の海だった。 記事を読んでいくと、「米軍普天間飛行場の危険性が継続するばかりか…

ジョージ・オーウェル『葉蘭を窓辺に飾れ』書評|詩人ごっこはこれでおしまい

これからジョージ・オーウェルを読もうとするときに、『一九八四年』でも『動物農場』でもなく本書から入る人はそれほど多くはないと思うが、私はそういう出会い方をした。ある雑誌の中で、ラッパー、ECDが紹介していたのを見つけたのである。 紹介、とい…