Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

真藤順丈『宝島』書評|THERE'S A RIOT GOIN' ON

戦後の沖縄が強いられた抵抗の歴史を、ひとつの大きな精神史として語りなおすこと。戦後から施政権返還までの沖縄で経験された実際の歴史を、あえて偽物の歴史として語りなおすこと。本作で直木賞作家となった著者が、どのような思いでこの541ページに及ぶ大…

桐野夏生『メタボラ』書評|はなればなれに

二人の男が出会い、別れるまでの刹那。本書は、少なくともその意味において青春小説と呼ぶことができるだろう。一人は記憶喪失、もう一人は家出という、小説的としか言いようのない状態で闇夜を逃げ惑う二人が、沖縄北部、やんばると呼ばれる山奥で事故のよ…