Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹『女のいない男たち』書評|Some Girls、あるいは長いお別れ

「まえがき」があることにまず驚く。こんなに慎重な作家だったろうかと思うほど親切な自著解題から入る本書は、著者の言葉を額面どおりに受け取れば、「いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち」についての、コン…

永吉希久子『 移民と日本社会』書評|「移民問題」を乗り越えていくために

日本で暮らす「移民」について知り、考えようという時に、望月優大著『ふたつの日本』の次に読むといいとどこかで読んだが、まさにそのとおりだ。「今、何が起きているのか」を直視し、建前だらけの受入制度を批判するのが『ふたつの日本』だったとすれば、…

MOMENT JOON『日本移民日記』書評|In The Place To Be

「個」であること。著者が特別な感情を寄せるラッパー、故ECDとの共通点を探すなら、私はこの一言にたどり着く。孤高を貫くとか、そういうことではない。「何かに寄りかからない」ということである。 例えば、自らが「移民」であることを宣言するときも。件…

【読書案内】特集『沖縄を知るための本』――海を受け取ってしまったあとに

上間陽子さんの『海をあげる』が、2021年の「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を受賞した。受賞スピーチが素晴らしいと、ツイッターのタイムラインはちょっとしたお祭りのようだった。 だが、私はそのお祭りのような騒ぎに入っていけなか…

筒井淳也・前田泰樹『社会学入門』書評|社会を知ることについて、知るためには

この際だから白状してしまうが、ここ最近、社会学の入門書的なものを読んだり、『質的社会調査の方法』に続き、無謀にも有斐閣のストゥディア・シリーズに手を出したりしているのは、岸政彦先生(と、勝手に呼んでいる)の著作や仕事、その方法論的な問題意…