1000字書評ブログ “Trash and No Star”

字数制限1000字での書評ブログです。月に2度の更新が目標。好き嫌いにかかわらず、読んだ本はすべて書評します。

【音楽】

MOMENT JOON『日本移民日記』書評|In The Place To Be

「個」であること。著者が特別な感情を寄せるラッパー、故ECDとの共通点を探すなら、私はこの一言にたどり着く。孤高を貫くとか、そういうことではない。「何かに寄りかからない」ということである。 例えば、自らが「移民」であることを宣言するときも。件…

村上春樹『意味がなければスイングはない』書評|音楽と人生、あるいは村上春樹のベストワン

音楽を「深く聴く」とは、どんなことだろうか。あるいは、音楽の「意味」とはなんだろうか。そんな大きな問いに真正面から答える代わりに、私はこの本の存在を挙げたい。短編までくまなく読んでいる、というレベルの読者ではないが、それでも言わせてもらう…

唾奇『道 -TAO-』音楽評|ラッパーと地元(沖縄篇①)

夕陽を全身に浴びたようなメロウ・ギター。ダーティなのに内省的なリリック。淡々と進行するビートに身を任せ、タイトル・トラックの「道 -TAO-」を聴いていると、目の前の日々を、人生を、いろんなものに力を借りながらどうにかやり過ごしている若者たちが…

Cocco『想い事。』書評|夢の終わり、故郷の続き

今年の慰霊の日、【6月23日、黙祷】と題されたCoccoのエッセイをツイッターで読んだ。1995年、バレリーナを夢見て沖縄を飛び出していった少女。文章はその回想から始まる。 地方を捨て、東京を目指すの多くの若者がきっとそうであるように、地元への眼差しは…

ECD『他人の始まり 因果の終わり』書評|命日に寄せて

人生は一回で、後戻りできない。その残酷さ。そして、その横を淡々と流れていく「時間」のさらなる残酷さ、そのようなものが感じられる。文章そのものが、止まることのない「時間」みたいだ。とにかく寂しい本だった。 ラッパー、ECD。 3年前の今日、亡…

植本一子『働けECD わたしの育児混沌記』書評|「たまにはひとりになりたい自分」を認めたあとに

今からこの本を読もうとするとき、私たちはすでに二つの結末を知っている。つまり、2011年3月11日に何が起きるのかを。そして、この本で妻に「石田さん」と呼ばれている男が、やがて娘たちの成長を見届けられなくなってしまうことを。 しかしそのことは、本…

あるいはジャジーがせいぜいな夜の独り言|『文學界』2020年11月号感想

洋楽ロックやらヒップホップのアルバムなら100枚か200枚は聴いたはずだが、ジャズとなるとそうはいかない。ノラ・ジョーンズまで含めていいならようやく10枚とか20枚とか、せいぜいそんなところだろう。愛聴盤を訊かれれば、無防備なまま『ゲッツ/ジルベルト…