1000字書評ブログ “Trash and No Star”

字数制限1000字での書評ブログです。月に2度の更新が目標。テーマによっては、音楽や映画も扱います。

〔新潮社〕

吉本ばなな『ミトンとふびん』書評|人生には「もうここにはないもの」がたくさんある

見え透いた悪意の塊のようだったポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』の中でもひと際冷笑的で、露悪的だったシーンと言えば、妻を愛しているかと訊かれたIT社長の男が、半地下暮らしの男が運転する高級車の後部座席で浮かべた醜い微笑だろう…

岸政彦『図書室』書評|「世界の終わり」の終わりについての、小説みたいな映画

誰かが映画化したらいいのに、とまず思った。というか、誰もやらないなら俺がやるで、と慣れない大阪弁で思った。まあ、すでに想像の中ではほぼ撮り終えているのだが。謎のウイルスで人類が滅び、世界が終わったあとの世界を、大量の缶詰を抱えながら歩く少…

岸政彦『ビニール傘』書評|人生はちょっとだけ寂しい

読み終えたあとにじんわりと滲み出る、この気持ちを安易に感動と呼んではいけないような気がする。もっと本当の、もっと温かい、別の呼び方をしてあげたいなと思う。でもそれが何なのかが分からない。意図的に「文学者としての岸政彦」は遠ざけてきたはずな…

『フォークナー短編集』書評|あたしは黒人にすぎないんだわ。そんなこと、あたしの罪じゃないけど

なすすべもなく、大きな力に押し流されていく南部の人々。もたらされる復讐。あるいは破滅。誰にもそれを止めることはできない。まるで最初からそうなることが決まっていたみたいに。南北の分断により傷んだアメリカ、人種主義、奴隷制、女性嫌悪、愛と憎し…