The Bookend

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

目取真俊

目取真俊『魂魄の道』書評|誰とも共有できない「罪の手ざわり」を抱えながら

買ったはいいものの、読むのが恐ろしくて、しばらく触れることができなかった。それが目取真俊という作家である。 本書には「沖縄戦の記憶」をめぐる短編が5つ、発表順に並んでいるのだが、もっとも古い表題作「魂魄の道」は2014年初出となっている。2014年…

目取真俊『眼の奥の森』書評|死者は沈黙の彼方に

この救いのない物語をいったいどのように受けとめたらいいのか、見当もつかないまま最後のページをめくり終える。ラース・フォン・トリアーの映画のよう、と言えば、伝わる人には伝わるかもしれない。苛烈で、執拗なまでの暴力描写がもたらす閉塞感と没入感…

目取真俊『沖縄「戦後」ゼロ年 』『ヤンバルの深き森と海より』書評|海を受け取ってしまったあとに(12・13)

目取真俊の本を読んで無傷で済む人はほとんどいないだろう。本土で平和憲法の幻想とともに暮らす「踏まれている者の痛みに気づかない者」たちの足を、踏まれている側から切り裂く一方、同じくらい鋭い言葉で、沖縄内部の迷いや分断を内側からえぐってもいる…

目取真俊『虹の鳥』書評|海を受け取ってしまったあとに(11)

冒頭、ひとりの少女が車に乗り込み、運転手の男に行き先を告げる。素っ気ないその口ぶりからは、恋人や友人といった関係を思わせるような親密さは微塵も感じられず、かと言って、タクシーの乗客と運転手の間に形成される束の間の連帯感さえ、ない。 まだ17歳…