日本で暮らす「移民」について知り、考えようという時に、望月優大著『ふたつの日本』の次に読むといいとどこかで読んだが、まさにそのとおりだ。「今、何が起きているのか」を直視し、建前だらけの受入制度を批判するのが『ふたつの日本』だったとすれば、本書は「これからどうすればいいのか」という見通しを与えてくれる。
すでに多くの人が肌で感じているように、日本がこの先、今のように社会を維持していこうとするならば、少子高齢化による労働者不足は克服できそうもない。コンビニのアルバイトが一斉に留学生に置き換わったことからだけでも、それは容易に想像がつく。政府が彼らをどう呼ぼうと、担い手不足の業界を目指して「移民」は日本にやってくる。そして、それを望んでいるのは他ならぬ「私たち」なのだ。
あえて指摘するなら、本書にも「移民は必要である」という含意はあると思われる。その必要性を前提とした上で、建設的な議論のベースとなる「共通の基盤」を構築しようとしているのだ。
そのために本書が立脚するのは、大量の統計データだ。「移民は労働条件を悪化させるのか」、「移民は日本経済の成長につながるか」、「移民の受け入れは少子化に歯止めをかけるか」、「移民は福祉国家の貢献者か受益者か」、「移民は犯罪を増加させるか」――各章にはこんな見出しが並ぶが、統計に寄った「量的な記述」は、読者に冷静さを忘れさせない。
同時に、見て見ぬふりをしてきた事実が突き付けられたりもする。例えば、2018年に不法就労で摘発された男性では「建設作業」に従事する者がもっとも多く、女性では「農業従事者」がもっとも多かったという。また、出身国では専門職や管理職に就いていた人でも、日本でその技能を生かせる職に就くことは難しいことも分かっている。このことをどう考えるべきかは言うまでもないだろう。この国の労働市場で特等席を占めているのは、相変わらず「日系日本国籍者の男性」なのだ。
こうした象徴的な問題だけでなく、例えば「自治会」のようにローカルな問題にまで議論が及んでおり、あなたもきっと射程に入る。「終章」で喝破されるように、世間で「移民問題」と呼ばれているものは、私たちが先延ばしにしてきた「日本問題」に他ならないのだ。「社会構造がもつ問題が変わらない以上、そこからくるひずみを移民たちに課したところで、問題が解消するわけではない」という指摘が重い。
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