Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽のレビューブログ。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小野寺拓也・田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』書評|包摂と排除の危険なダイナミクス

たった一冊の「ネタ本」を頼りに、Twitterでその道の専門家に「論戦」を挑む。おそらくは「インターネットで真実に目覚める」ことが可能になり、またSNSの登場によって「論戦」を吹っ掛ける環境が整った2000年代後半以降の文化だと思われるが、そうした「歴…

ジョナサン・グレイザー監督『関心領域』映画評|ナチス官僚たちの熾烈な出世レース

(画像は公式Twitterから転用) まっくら。ただただ、まっくらだ。 映画の冒頭、ダーク・アンビエントが不穏に鳴り響くなかで、画面にはただ暗闇が映されている。1分か、2分くらいだろうか、ずいぶんと長く感じる。とにかくしばらくの間、映画からも観客から…

鈴木布美子『レオス・カラックス——映画の二十一世紀へ向けて』書評|おしゃべりで孤独な映画について

それは愛についての映画であると、誰しもが思っている。愛と呼ぶほどの成熟がそこになかったとしても、それは暫定的に、やはり愛と呼ぶしかないのだと、誰しもが思っている。 だが、愛と呼ぶよりも実は破滅に近いであろうその報われない行為を指して、しかも…