Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽のレビューブログ。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2025年1月のこと - Monthly Report

夭逝したフィールドワーカー・打越正行氏の追悼イベント、「打越正行を追悼しない」を配信で視聴した。1月28日の夜だ。出演は、『地元を生きる』メンバーのお三方。死ぬほど笑った。愛に満ちた時間だった。愛はきっと、どこか生活から離れた場所で高尚に語ら…

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』書評|生と死のあわいで

あまりに美しい文章で、思わず声に出して読みたくなった。この言葉たちは、空気に触れるとどんな響きをするのだろうかと。覚えている限り、このような気持ちになった本は他にない。 実際に声に出して読んでみると、それは翻訳されたものとは思えぬ滑らかさで…

村上春樹『風の歌を聴け』書評|微かな予感に導かれて

ただ通り過ぎていく時間、取り返しのつかない夏の夢、それをただ眺めていることしかできない無口な少年、ビールと煙草、冷たいワイン、古臭いアメリカン・ポップス、そして微かな予感――。 村上春樹のデビュー作、『風の歌を聴け』を一年ぶりに読んだ。前にも…

『社会学はどこから来てどこへ行くのか』書評|「特別な時代診断」から「普通の学問」へ

ついに読み切った。数年寝かせてたくらいでは積読業界ではまだまだ若手の部類だろうが、読んでみては閉じ、読んでみては閉じ、時間が空いたのでまた冒頭からやり直してまた挫折して、、、を延々繰り返していた、我が家を代表する積読本をついに読み切った。 …

岸政彦『調査する人生』書評|社会をいちばん遠回りで理解する方法

生活史を読むと、いったい何を読んだことになるのだろうか。 その暫定的な答えが、仮に「人生」なのだとしたら、「人生」とはいったいなんだろうか。名もなき人びとの「人生」を読んで、いったい何を読んだことになるのだろうか。 「本なんて面白ければなん…