Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

サッサ・ブーレグレーン『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』書評|人間が作ったものならきっと変えられる

原著は2006年。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」で5位となったスウェーデンで発表されている。 こういう児童書が出てくるから5位になれるのか。それとも5位になれるだけの社会環境があるからこういう児童書が出てくるのか。 いずれ…

チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』書評|出口のない迷路に放り込まれ、心を壊していくまで

これはディストピア小説である。が、舞台はどこかのSF的近未来でもなければ、完全監視型の独裁国家が牛耳る暗黒大陸でもなく、現代韓国だ。地獄を描くのに、特殊な寓話的設定などもはや不要ということなのだろう。女性たちが生きる現実そのものが、すでに…

雨宮処凛『「女子」という呪い』書評|うかつに女なんかやってらんない

読みながら、せめて2004年くらいの本であって欲しいと思っていたが、2018年の本だった(元の連載は2012年開始)。回想が多いとは言え、衝撃的である。社会は本当に、少しでもマシになっているのだろうか。まったく自信がなくなるような一冊である。 そう、こ…

小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』書評|沈黙は肯定ではない

痴漢、性暴力、女性差別。本書がこれらの題材を扱って明らかにするのは、ジェンダー・ギャップ指数116位(146か国中)のこの痴漢大国で、「ほとんどないこと」にされている女性たちが、ただ普通に生きるだけのことがいかに困難か、である。 そもそも、「ほと…