The Bookend

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サッサ・ブーレグレーン『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』書評|人間が作ったものならきっと変えられる

 原著は2006年。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」で5位となったスウェーデンで発表されている。

 こういう児童書が出てくるから5位になれるのか。それとも5位になれるだけの社会環境があるからこういう児童書が出てくるのか。

 いずれにしても、日本の10歳がこれをクラスメイトにからかわれることなく読めるのだろうか、と心配になってしまった。

 

 「わたしは、わたし。そのままの自分でいさせて!」というフェミニズムの核心を目指す知の冒険は、10歳の女の子・エッバが、ある日新聞でG8の首脳陣が横一列に並んだ写真を見るところから始まる。「似たようなスーツ姿のおじさんが8人!」と、少女の衝撃は大きい。

 この光景はそれから20年近くたった今でもまったく変わっていない。少なくとも、ここ日本においては。直近では、9月に発表された岸田内閣の副大臣26人・政務官28人を合わせた計54人のすべてが「似たようなスーツ姿のおじさん」だったことが話題になった。

 こういう批判が出るとまたしても「似たようなスーツ姿のおじさん」がどこからともなく現れて、「人数云々で騒いでいるのは日本だけ。ジェンダーに関する議論が世界から一周遅れている」などとすごんだりする。「ジェンダー・ギャップ指数」で116位に沈む日本。中でも分野別で139位となり、ボトルネックとなっているのは「政治」の世界なのだが。

 

 今ならば違うやり方もあったかもしれないが、SNSなんてまだなかったであろうエッバは、ちょっと年上の友だちや、実は自分と同じように「オッサン優先社会」に違和感を持っていた友人たちとチームを結成し、さまざまな疑問を追いかけていく。実質的な導き役はエッバのおばあちゃんであり、エッバはそこで女性運動の歴史と出会っていく。

 通史的な勉強をしたことがない自分にとって特に印象的だったのは、20世紀のはじめ頃、女性の参政権を求めて闘った英国女性たちの物語だ。陳情書が受け取ってもらえなかったり、怒鳴られたり、殴られたり、道路に放り出されたり、警棒で殴られたり、逮捕されたり、投獄されたり、まるでアメリカ黒人史を読んでいるような錯覚に陥った。

 

 過去、女たちはさまざまな手段で支配されていた。あるいはそれは、現在進行形の支配である。しかし児童書、つまりは未来への希望の書として書かれている本書では、子どもたちを冷却させる否定の言葉は、時折、棘のようにチクチクと出てはくるものの、エッバたちの生まれたての情熱の前でやがて姿を消していく。

 最後に残るのは、「生まれついた特徴は変えられないからね。だが人間が作り出した慣習であれば、そう、変えられる!」という確信、または勇気である。日本の10歳を心配する前に、諦めることに慣れ切ってしまった大人がまず、読むべき本かもしれない。

 

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著者:サッサ・ブーレグレーン
訳者:枇谷玲子
出版社:岩崎書店
初版刊行日:2018年5月31日