Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

スコット・フィッツジェラルド

スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』書評|すべてを昔のままに戻してみせるさ

久しぶりに全体を読み返し、そうだ、『グレート・ギャツビー』は確かにこんな話だったとクリアに思いだした。同時に、いずれまた細かい筋書きはすっかり忘れてしまうだろう、と思わずにはいられなかった。これ自体、ひとつの幻についての回想録であり、ひと…

フィッツジェラルドの短編を全部読んでみた【PART 1】#JAZZ AGE: 1920-1926

全部で170以上もあるというスコット・フィッツジェラルドの短編小説を少しでも体系的に、かつ、ひとつでも多く読もうとしたときに最初に困るのは、その作品群が、そもそもほとんど翻訳されていないことと、翻訳されていたとしても、そのレパートリーがあまり…

スコット・フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』書評|まずは貴重な訳出に感謝を

2009年刊行。デビッド・フィンチャーによる表題作の映画化にあわせた出版ではあるが、山っ気はなく、あとがきにもあるように、「いままで日本であまり語られてこなかった、ミステリーやファンタジーにおけるフィッツジェラルドの作品をまとめられないか」と…

スコット・フィッツジェラルド『冬の夢』書評|ずっと昔、僕の中には何かがあった。でもそれは消えてしまった

「私を構成する9冊」をやれば確実に入ることになるであろう、1934年の『夜はやさし』も、フィッツジェラルドの絶対的な代表作として確固たる地位を確立している1925年の『グレート・ギャツビー』も、恥ずかしながら話の筋はあんまり覚えていない。最後に読ん…

スコット・フィッツジェラルド『マイ・ロスト・シティー』書評|すべて悲しき若者たち

スコット・フィッツジェラルドは、44年というその短い生涯で、160もの短編を残したと言われている(Wikipediaでそのリストを眺めることができる)。 荒地出版社から1981年に出ている3部作――わが国最初の年代別作品集とう触れ込みである――の第1巻『ジャズ・エ…