Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

打越正行

岸政彦編『東京の生活史』書評|誰にでも作れたかもしれないが、誰も作ろうとしなかった本

ほとんど奇跡のように存在し、なかば事故のように分厚いこの書物を先ほど読み終えた。読み終えた、という言い方が正しいかどうかさえ、正直よく分からない。ある意味では「聞き終えた」とも言えるし、「語り終えた」とさえ言えるかもしれない。 それどころか…

『地元を生きる 沖縄的共同性の社会学』書評|排除され、分解された「ひとり」から何が見えるか

「癒しの沖縄」といったラベリングや、「助け合う沖縄」「抵抗する沖縄」といった理想化を回避し、沖縄が、そこに暮らす人々にとって「さまざまであること」を描くこと。内地と沖縄を隔てる境界線を境界線と認めつつ、内地の人間として、境界線の「向こう側…

打越正行『ヤンキーと地元』書評|「癒しの沖縄」から切り離された世界で

これもまた、青い海や青い空が眠った後の沖縄についての本だ。ちょうど、上間陽子の『裸足で逃げる』がそうだったように。改造されたバイクのテールランプだけが、男たちの行く先を照らしている。 著者にとって社会とは、人間である。社会は、人に「生きられ…