【映画・ドラマ】
(画像は公式Twitterから転載) モスクワから、世界の果てのような北部の街・ムルマンスクへと向かう寝台列車で、一組の男女が相席となる。 男から見れば、女は、かわいいけど不愛想。イヤホンで音楽を聴いたり、窓の外に向かってビデオカメラを回したりする…
(画像は公式Twitterから転載) きっとこれは繰り返されることになるのだろう、思わずそう確信する冒頭のショットにぼんやりと見入る。事実、夜の街灯に群がる白い蛾のような雪は、やがて閉鎖が決まったボクシングジムに溜まった埃となって再び宙を舞うだろ…
(画像は公式サイトから転載) これは村上春樹作品の「完全な」映画化である。抑揚を欠いたトーンで、書き言葉を話す無表情な人間たち。繰り返される内省と、何度も行き着く袋小路。「僕」と、どこか「霊的な」女。そういった村上春樹的なものをそのまま映画…
(画像は公式Twitterから借用) 女が一人、タクシーを降りてコザの街に降り立つ。少し前に、東京からやってきて、広大な米軍基地とオスプレイの轟音に迎えられたばかりだ。 ある目的地に向かって歩き出す彼女を、カメラはまず頭上から視界の端に収め、次のカ…
映画館を後にしながら、どうしてこの映画はこんなにも悲惨でなければならなかったんだろう、と思わずにはいられなかった。悲しかったし、無性に腹が立った。いや、それ以上にただ空しかった。いったいこれは誰のための映画なのだろう。まったく理解ができな…
案外、取り扱いに悩む作品である。 ゲットーの片隅で暴力に怯えながら暮らす少女が、自らの人生を選択し直す過程を描いた『プレシャス』が、徹底的に個人的な(むろん、だからこそ社会的な)映画だったのに対し、本作はまず歴史という大きな枠組みが先にあっ…
スパイク・リーが『ゲット・オン・ザ・バス』というタイトルの映画を撮っているのなら、それは間違いなく1960年代の「自由のための乗車運動」が題材に決まっていると思い込んでいたのだが、違った。 本作でバスに乗った男たちが目指しているのは、1995年のワ…
アメリカで黒人として生まれることについての、映画である。勝手に副題をつけていいなら「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」にするだろう。ブルースが歌ったものとはだいぶ異なるが、ここにもアメリカの飢えきった心があり、アメリカに生まれることの耐え難い苦難…
誰もが「死体探し」の青春モノとして記憶に留めるロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』を分かりやすく、どこかシニカルに引用しながら、「Boyz」たちの青春が幕を開ける。人が死ぬことがまったく珍しくない地域で、少年たちは遭遇した死体をどう見…
警官に喉を押さえつけられ、意味もなく死亡した黒人男性たち。彼らは最後、「息ができない」と苦しみながら息絶えたという。SNSでBLM運動が盛り上がろうと、下火になろうと、評価・検証すべき「歴史」になろうと、そうした犠牲者は耐えることがない。 …
時代の後知恵とはいえ、本書に関しては、ジェンダー、もしくはレイシズムの観点からいくら値引きすべきかという問題がまずあるだろう。 例えば、エディ・マーフィの個性を評するのに「白人には見られない底抜けの明るさ」などという表現では個人の資質をあま…
かなり身構えて劇場に向かった。沖縄の離島、台湾からの移民、そして炭坑。こういった題材が交わる場所で撮られた映画が、たとえある時代を生き延びた一人の老女の余生を追ったものであるにせよ、決して穏やかな内容で済むはずがないからだ。 むしろ、沖縄の…