Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽のレビューブログ。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

斎藤真理子

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』書評|生と死のあわいで

あまりに美しい文章で、思わず声に出して読みたくなった。この言葉たちは、空気に触れるとどんな響きをするのだろうかと。覚えている限り、このような気持ちになった本は他にない。 実際に声に出して読んでみると、それは翻訳されたものとは思えぬ滑らかさで…

チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』書評|出口のない迷路に放り込まれ、心を壊していくまで

これはディストピア小説である。が、舞台はどこかのSF的近未来でもなければ、完全監視型の独裁国家が牛耳る暗黒大陸でもなく、現代韓国だ。地獄を描くのに、特殊な寓話的設定などもはや不要ということなのだろう。女性たちが生きる現実そのものが、すでに…