【ホロコースト】
戦争中とはいえ、仕事として一般市民を殺すということ。しかも、一人とか二人とか、そういったレベルではない。何十、下手をすれば何百といった無抵抗の人々を、至近距離で、流れ作業的に射殺するということ。あるいは、生きては帰ってこれない収容所に家畜…
わずか数行のうちに、数千人が亡くなっていく。それも、次から次へと、だ。 何か悪いことをしたわけではないのに、その殺人は「処刑」と呼ばれた。ただ存在を丸ごと否定され、(こう言ってよければ――)意味もなく殺されたのだ。ページをめくっても、めくって…
すごい本だった。ぐっと圧縮された情報量の多い文章であり、予備知識なしの挑戦はやや厳しいかもしれないが、ナチズムを知ろうとするなら、石田勇治著『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)に続けて読むべき必読の一冊である。 まず、前提が違う。著…
ナチス独裁の歴史を描く、その時代の切り取り方がまずは興味深い一冊である。およそ250ページのうち、ナチスによる権力掌握の過程が、わずか77ページ(3割程度)にとどまっているのだ。 『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の巻末ブックガイドで「最…
著者・中谷剛氏は、ホロコーストの歴史にとって二重の意味で部外者である。つまり、「戦後生まれの」、「日本人」だという意味で。 もちろん、そんなことは本人が一番わかっていて、アウシュビッツ=ビルケナウ博物館における日本人初の(そしておそらくは今…
文字通り「絶滅」を目指して実行され、ヨーロッパ全体で「少なくとも559万6000人」の犠牲者を出したという、ナチ・ドイツによるユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)。いったい、いかなる条件下でそれは可能となったのか。 先に紹介した『検証 ナチスは「良いこ…
〈悪の凡庸さ〉――。 確かに、魅力的なフレーズだ。短いながらも、その意味するところを考えさせ、何かを喚起する力がある。なんだか「特別な教訓」を受け取れそうな気さえしてくる。 だが、本書のいささか込み入った議論は、良くも悪くも、〈悪の凡庸さ〉と…
たった一冊の「ネタ本」を頼りに、Twitterでその道の専門家に「論戦」を挑む。おそらくは「インターネットで真実に目覚める」ことが可能になり、またSNSの登場によって「論戦」を吹っ掛ける環境が整った2000年代後半以降の文化だと思われるが、そうした「歴…
(画像は公式Twitterから転用) まっくら。ただただ、まっくらだ。 映画の冒頭、ダーク・アンビエントが不穏に鳴り響くなかで、画面にはただ暗闇が映されている。1分か、2分くらいだろうか、ずいぶんと長く感じる。とにかくしばらくの間、映画からも観客から…