Trash and No Star

本、時々映画、まれに音楽。沖縄、フェミニズム、アメリカ黒人史などを中心に。

2022-01-01から1年間の記事一覧

MOMENT JOON『日本移民日記』書評|In The Place To Be

「個」であること。著者が特別な感情を寄せるラッパー、故ECDとの共通点を探すなら、私はこの一言にたどり着く。孤高を貫くとか、そういうことではない。「何かに寄りかからない」ということである。 例えば、自らが「移民」であることを宣言するときも。件…

【読書案内】特集『沖縄を知るための本』――海を受け取ってしまったあとに

上間陽子さんの『海をあげる』が、2021年の「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を受賞した。受賞スピーチが素晴らしいと、ツイッターのタイムラインはちょっとしたお祭りのようだった。 だが、私はそのお祭りのような騒ぎに入っていけなか…

筒井淳也・前田泰樹『社会学入門』書評|社会を知ることについて、知るためには

この際だから白状してしまうが、ここ最近、社会学の入門書的なものを読んだり、『質的社会調査の方法』に続き、無謀にも有斐閣のストゥディア・シリーズに手を出したりしているのは、岸政彦先生(と、勝手に呼んでいる)の著作や仕事、その方法論的な問題意…

新垣譲『インタビュー 東京の沖縄人』書評|寄せては返す、東京の沖縄

シンプルなタイトルだが、読み取れる含意が二つある。一つは、沖縄人(ウチナーンチュ)というアイデンティティがあること。もう一つは、沖縄人は東京で暮らしていても沖縄人だということだ。 雑誌『ワンダー』連載時のタイトルは「聞き書き 東京の沖縄人」…

村上春樹『意味がなければスイングはない』書評|音楽と人生、あるいは村上春樹のベストワン

音楽を「深く聴く」とは、どんなことだろうか。あるいは、音楽の「意味」とはなんだろうか。そんな大きな問いに真正面から答える代わりに、私はこの本の存在を挙げたい。短編までくまなく読んでいる、というレベルの読者ではないが、それでも言わせてもらう…

『反逆の神話〔新版〕──「反体制」はカネになる』書評|カウンターカルチャー自省録

オルタナティブの追求を諦め、カウンターカルチャー的な思考を卒業し、大衆と和解せよ。そして本当の意味で、社会を変えよ。これが本書に込められたメッセージである。他には何もない。「カウンターカルチャーとは単なる現実逃避である」というのが、本書の…